二十世紀梨の栽培から100年あまり。鳥取県ではオリジナル品種の育種が行われていて、人気を集めています。先日、鳥取市河原町でバラエティ豊かな25品種もの梨を栽培するありのみ倶楽部前田(まえた)梨園を訪れ、梨栽培について取材してきました。その様子は、大豆加工食品業界唯一の専門情報誌「月刊フードジャーナル」2018年10月号でご紹介しています。こちらでは、記事では文字数の都合上、掲載しきれなかったこぼれ話をご紹介したいと思います。

25品種の梨を栽培。シーズン中は常時10〜12品種が揃う

ありのみ倶楽部では、125aの梨園で25品種の梨を栽培しています。近隣の梨農家さんに先駆けて、今年は7月20日からハウス栽培の秋栄(あきばえ)梨を販売。鳥取大学で誕生したブランド品種で、15年の歳月をかけて育種されました。甘味や酸味のバランスがよく、風味豊かでコクのある味わいが人気です。秋栄梨のハウス栽培を手がけている梨農家は、全国でもめずらしいのだそう。

上記の写真は、鳥取県のオリジナルブランドの新甘泉の梨園の様子。2008年(平成20年)に品種登録された新品種で、酸味はまろやか、甘さが際立つ大玉の人気の品種です。圃場を訪れたのは9月半ばで、新甘泉のピークはやや過ぎた感がありました。

最盛期を迎えていたのは秋甘泉(あきかんせん)。新甘泉の翌年に誕生した新品種で、こちらも鳥取県のオリジナルブランドです。糖度の高さが特長で、酸味は控えめで果汁たっぷり。皮の表面にはそばかす状の模様がくっきりと現れています。

1本の木から収穫できる梨の数はどれくらい?

たわわに実る梨の樹齢は、品種によっても異なりますが、赤梨系統の木ならおよそ30年。ありのみ倶楽部前田完治さんによると、青梨系では、鳥取県に樹齢110年を超える二十世紀梨の木があるとのことですが、30年を過ぎると老木に域に入り、生産性を考えると30年程度で植え替えするのが理想なのだそう。

1本の木から収穫できる梨の数は、木の作り方や仕立て方によって大きく異なり、見学させていただいた新甘泉秋甘泉の圃場では1本で60個程度ですが、1本で200〜300個採れるような枝の伸ばし方も可能。さらに、四方八方に枝を伸ばすように仕立てると、なんと1,800〜2,000個も収穫できる場合もあるようです。樹木の生命力に、ただただ驚くばかり!

鳥取の梨

9種類の梨の糖度を計りながら食べくらべ

梨の圃場を見学後は、栽培されている約25品種のなかから、二十世紀梨、新甘泉、秋甘泉、秋栄梨、爽甘(そうかん)、かおり、秋麗(しゅうれい)梨、優秋(ゆうしゅう)、秀玉(しゅうぎょく)の9種類をご用意いただいて、食べくらべさせていただきました。

株式会社アタゴ様にご協力いただき、糖度計、非破壊糖度計、糖酸度計の3つを持参していましたが、時間の都合上希釈が必要な糖酸度計については、後日計測しました。

鳥取を代表する梨といえば、二十世紀梨。明治時代に千葉県で偶然発見され、鳥取県では1904年(明治37年)から栽培が始まりました。梨は急斜面でも栽培でき、鳥取県が普及に力を入れていたこともあって、県内で急速に広まったのだそう。糖度は12.0度と適度な甘味で、さっぱりとした食味が好みだというかたも多いようです。

梨 非破壊糖度計

和梨専用の非破壊糖度計です。光センサーによって糖度を計測できます。収穫前に作物を傷つけることなく使用できるので、生産農家さんにとっては使い勝手のよい糖度計です。

光の屈折率を利用した糖度計で計った爽甘の糖度は、なんと16.3度でした。さきほどの二十世紀梨が12.0度だったので、糖度が際立ちます。これほど甘く感じられた梨に出会ったことがなかったので、特に印象に残った品種でした。

もちろん、梨をはじめ、フルーツのおいしさは甘さだけで語ることはできません。糖度とともに、味の決め手となるのは酸度。特にフルーツは糖度の高さが注目の的になることも多いのですが、適度な酸っぱさは、おいしさを感じるために重要な役割を果たしています。

上記は、糖度と酸度が計れる和梨専用の糖酸度計です。まず、サンプルの原液で糖度を計り、その後、ビーカーにサンプル原液1gを入れ、精製水を50mlのラインまで注いで希釈します。その液で酸度を計ります。9種類の梨を順番に計測していくと、少しずつコツがわかりスムーズに作業できるようになりました。酸度の平均値は、株式会社アタゴ様の資料では幸水が0.06〜0.10%、それ以外の和梨は0.10〜0.40%とのこと。私が計測した9種類の梨は、0.11〜0.24%の間で数値が出ました。

樹上でしっかり熟れたものをおいしい時期に収穫する

ありのみ倶楽部の代表を務める、三男の前田大生さん(右)と父の完治さん。約20年前から、共同市場出荷をやめて生産直売スタイルに。
おいしい時期に、ちゃんと熟れたものを収穫して提供することがお客様の満足につながる」というのが前田さん親子の信念。食べておいしくなければ、次はもうない。また食べたい、買いたい、と思ってもらえるものを作ること、そして、よりよりDNAを求めて梨を探し、栽培にチャレンジした結果、約25種類もの梨が揃いました。

梨以外にも、桃やぶどうの栽培も行っています。ネット販売をはじめ鳥取市河原町にある道の駅清流茶屋かわはらでも販売。山陰方面へお出かけの際はぜひお立ち寄りくださいね。

ありのみ倶楽部前田梨園のホームページはこちら

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